Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.712 Zeichen · 29 Bildschirme
「へえ、そうでございます」
顎十郎は、急に眼ざしを鋭くして、
「そんなら、こうしちゃいられない、まごまごしていると、こんどは和泉屋が殺られてしまう。……さあ、大急ぎで日本橋まで突っ走ろう……ひょろ松、来い」
尻切草履を突っかけると、むやみな勢いで土手のほうへ走りだした。
竜舌蘭
夜もふけて、かれこれ八ツ半。
短い夏の夜のことだから、もうひと刻もすれば東が白む。
日本橋蠣殻町、海賊橋ぎわの佐原屋の近くで、宵の口からウソウソと動きまわるただならぬ人のけはいがあった。
橋の下、塀の片闇、天水桶のかげ、柳の根もと。
まだ月の出ぬ闇だまりの中に影のように這いつくばい、時にはよりそってなにかヒソヒソと囁きあうと、もとのところへ帰って、また動かなくなる。
夜がふけるにつれて、蠢くものの影はいよいよその数を増し、橋むこうの向井将監の邸の角から小網町の鎧の渡し、茅場町の薬師から日枝神社、葭町口から住吉町口と、四方から蠣殻町一円を蟻のはいでる隙間もないよう押しかこんでしまった。
一丁目のほうへ鍵の手に黒塀がめぐり、そのはしが土蔵になっている。
その廂あわいの、おんどりと暗い闇の中にしゃがんでいるのが、顎十郎とひょろ松。