Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.550 Zeichen · 27 Bildschirme
三十二万石の大名のお姫さまに酌をしてもらえたら、男に生れたかいがあらア。さっそく一筆……といっても、お恥ずかしながら、文字をのたくるような器用なやつは生憎ここにはいあわさねえ」
よせばいいのに、とど助が、
「よろしい、そういうことならば、拙者が一筆書きましょう」
アコ長が、膝をつついてよせと言ったが、とど助は、上機嫌でそんなことには気がつかない。サラサラと書き流したのを、こいつア面白い、で、一人がそれを持って駈け出す。
それから、ものの小半刻、『かごや』の門口にひとがたたずむ気配。
どこのどいつだ、うさん臭え、なんでひとの門口へマゴマゴしてやがる、手近にいたのが、
「やい、こん畜生」
ガラリと木戸を引きあけて見ると、
スッと上身を反らして立っていたのが、藤堂和泉守の御息女加代姫さま。
髪をさげ下地にして、細模様の縫入墨絵で河原撫子を描いた白絽の単衣に綿の帯を胸高に締め、腕のあたりでひきあわせた両袖は、霞かとも雲かとも。
膚はみがきあげた象牙のように冴えかえり、女にしてはととのいすぎた冷い面ざし。鷹揚な物腰の中にしぜんにそなわる威厳は目ざましいほど。
よもや、と思っていた。