Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.406 Zeichen · 27 Bildschirme
……ふたりで眼くばせなんかして、気味が悪いじゃありませんか」
と、言っているとき、傘に雨があたる音がし、小さな足音がたゆとうように家の前を行きつもどりつしていたが、そのうちに含みのある優しい声で、油障子の外から、
「お訊ねいたします、こちらが、仙波さまのお住居でございましょうか」
と、声をかけた。
お米
蔵前ふうの根の高いのめし髷。紫の畝織縮緬に秋の七草を染めた振袖。下膨れのおっとりした顔つきの十六七の娘。贅沢な衣裳とどことなく鷹揚なようすを見ても下町の大賈の箱入娘だということが知れる。
悪びれないようすで古畳の上へあがって来ると、あどけなくアコ長の顔を見つめながら、
「あたくしは深川茂森町の万屋和助の末娘で利江と申すものでございますが、姉が生きておりますとき、金助町の花世さんのところで、一二度お目にかかったことがございましたそうで、そのご縁にあがって、折入ってお願いしたいことがございまして……」
たった今、ひょろ松が話したのと同じいきさつを手短かに物語ってから、キッパリとした顔つきになって、
「……じつは、これからあたくしが申しあげますことは、いっこう取りとめないようなことなので、あまり馬鹿々々しくてお笑いになるかも知れません。