Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.527 Zeichen · 23 Bildschirme
「へい。……石井順庵先生の御診断でございます。あッしといたしましても、それ以上には、……」
藤波は、かすかに頷いて、
「それで、その毒はなんだ」
「ですから、はなッから、盛り殺したなんてことは誰れの考えにもなかッたことなんで……」
藤波は焦ら立って、
「すると、石井先生にも判定のつかねえような毒を、どこのどいつが見分けたというのだ」
千太は、無念そうに唇を噛んで、
「またしても、顎の化物の仕事なんでございます」
藤波は、ちぇッと舌を鳴らして、
「おい、あの顎はなんだ、神か、仏かよ。……多寡が番所の帳面繰りじゃねえか、馬鹿にするな。なるほど、今まではちッとは小手先の器用なところも見せたが、そこまでの智慧があろうとは思われねえ。……おい千太、念のために聞くが、では、その忠助という手代は、石井先生にも判らねえような巧妙な毒を盛れるような、そんな才覚のありそうなやつなのか」
「飛んでもない、まるっきり、ふぬけのような男なんでございます。とてもそんなことをしそうなやつじゃアございません」
藤波は、なんとも冷然たる顔つきになって、急に立ち上ると、
「おい千太、出かけよう」