Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.527 Zeichen · 23 Bildschirme
あまり上等な趣味ではない。寝っころがって中間どもの小ばくちを横合から眺めたり、とりとめのない世間話に耳をかたむけたりしながら、金のある間ごろッちゃらしている。尤もここぐらい、いろいろな世間のうわさが早く伝わってくるところもすくない。ここにごろごろしていると、肩が凝らずいながらにして浮世百般の消息がきかれる。顎十郎がいろいろと人の知らぬ不思議な浮世の機微に通暁しているのは、多分、そのためだろうと思われる。ただし、なにか思うところがあってやっているのか、それとも出鱈目なのか、こんな風来人のことだから、性根のほどはわからない。
中間部屋では顎十郎を知らないものはまずない。このほうでは、だいぶいい顔である。
綽名のゆえんであるところの、ぽってりと長い異様な顎をふりながら顎十郎がのっそり入って来ると、部屋部屋は俄かに活気づく。互いにひどく気が合うのである。謀反でも起すとなったら、江戸中の中間どもはひとり残らず顎十郎の味方につきかねない。顎十郎のほうでは、格別なにをしてくれと頼むでもない、のほほんと寝ころがっているのに、中間や馬丁たちはひどく察しがよくて、顎十郎のためにチョコチョコといろいろに働く。