Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.674 Zeichen · 36 Bildschirme
「見たか、とたずねられりゃ、見たと返事をするよりしょうがねえわけなんですが、それが、どうもなんとも、ざまのねえ話なんで……」
「どうした?」
「いま、くわしくお話します……。たぶん、ご存じじゃなかろうと思いますが、なにしろ相手は溶けりゃ形なしになる厄介なしろもの。……毎年の例で、こいつが西の丸の御車寄へかっきり四ツ半(午前十一時)につくのがきまりなんで。……と、言いますのは、お上は九ツ(正午)の昼御飯で、お膳をひくと、すぐその後でお氷をおあがりになるんで、この時刻はどんなことがあっても外されない。……ですから、お氷が四ツ半きっちりに御車寄へつくにはなん刻に氷室を出して、なん刻に駕籠へのせ、門を出るのがなん刻、壱岐殿坂をくだりきるのがなん刻と、お送り役と氷見役立ちあいで袂時計を持ってお駕籠の早さを割りつけ、大袈裟にいや、氷室から西の丸の御車寄まで何千何百歩と、きっちりときまっているくらいなものなんです」
「いやはや、たいへんな威勢のもんだな」
「まったく……軍談よみの『戦記』を聞くと、武者押しというのは、一鼓三足といって、歩度の間尺がきまっているもんだそうですが、お氷献上の駕籠ゆきは、添役が袂時計を見ながら、ホイと掛声をかけると、サッサ、サッサと四歩でる。