Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.674 Zeichen · 36 Bildschirme
青地は、はッと顔をあげ、
「なんと言われる」
顎十郎は笑って、
「あなたも、じょうずに嘘がつけない方だ、そんな頼りないことで、よく藤波がだませましたな」
「これはしたり!」
「などと驚いたような顔が、また嘘」
青地は荒らげた声で、
「嘘とは、そもそもなにをもって。……なんと言われようと手前が盗んだに相違ない」
顎十郎は手でおさえ、
「まあまあ、そんな大きな声をなすってもしょうがない。……それほどに言われるなら申しますが、いま、榊原から釣台が出たとおっしゃったようだが、榊原式部は前の月の中旬、九段の中坂へお所がえになって、あの屋敷はいま空家になっていることをご存じですか」
「おッ、それは!」
「藤波はうっかり見のがしたろうが、あたしはそんなことじゃだまされない。……いかに江戸が繁昌でも、無人の空家から祝儀の釣台が出てくることはない。もし、ほんとうにあったら、それは、お化の口」
チョロリと相手の顔を見て、
「……いいですか、あの日、お雪が氷室を出たのは、お添役の時計で十字五分。……一ツ橋へかかったのが十字四十五分。……ところで、あなたが氷室を飛びだしたのは、駕籠が出てから四半刻おくれた十字三十五分。