Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.674 Zeichen · 36 Bildschirme
「お話はよくわかりましたが、それは、チト妙ですな」
「はて」
「……古帷子で顔をつつんで一ツ橋の門から駈けだし、お氷の駕籠につきあたって、あわててまた門内に駈けこんだその男は、酒井の大部屋で手遊びをしていた石田清右衛門という御家人くずれ。……勝負のことで小者の小鬢を斬り、足にまかせて逃げだした鼻さきへ駕籠が来て、ついのはずみに駕籠をひっくり返し、これは、と狼狽えて、また部屋へ逃げかえった……氷もなにも盗んじゃいないのです。いわんや、あなたの子息の長一郎さんとやらじゃないんだから、つまらぬ庇いだては、まずまず御無用」
青地は、思わず膝をのりだして、
「そ、それは、事実で……」
「事実もなにも、酒井の部屋には、これが嘘でないという証人が十人、二十人とおります。……もっとも、石田清右衛門のほうは、自分が駕籠をひっくり返したために、こんなえらい騒ぎになっているなんてことは知らない」
顎十郎は、長い顎のさきを撫でながら、うそぶいて、
「……ところで、手前には、だれがお氷の箱をあなたの家へ投げこんだか、だいたいあたりがついている。……が、それは、こっちの話。……ところで、氷の箱ですが、これは盗まれたのではなくて駕籠からころげだし、あのへんの草むらの中へ落ちていた。