Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.783 Zeichen · 22 Bildschirme
かりに、ひとが斬ったとなると、行違いざま抜打ちにやったのだと思うほかはないが、実際にやってみると、須臾のあいだに、こんな見事な傷をつけるということは、いかな達人でもとうてい不可能である。いわんや、場所も形も大きさも、いずれも寸分違わないということになれば、人間わざの及ぶところではないのである。けっきょく、これは鎌鼬の仕業だということになった。
古いころから、人が通り風の気にふれると、不意に皮膚が裂けて鎌形の傷がつき、甚だしく出血して生命をおとすことがあった。越後や信濃や京都の今出川の辺ではたびたびあったことである。
鎌形の傷を鎌風といい、これはかまいたちという妖魔の仕業だとされていた。
『倭訓栞』に、
奥州越後信濃の地方に、つじ風の如くおとづれて人を傷す。よつて鎌風と名づく、そのこと厳寒の時にあつて、陰毒の気なり、西土にいふ鬼弾の類なりといへり。
とみえている。いま庄兵衛の膝のうえに拡げてあるのがその『倭訓栞』。つまり、庄兵衛は今までこのかまいたちと首っぴきをしていたのである。
庄兵衛がいつまでもにが虫を噛んでいるので、花世は手持無沙汰になったものとみえ、