Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.707 Zeichen · 20 Bildschirme
「はなっから、間のぬけた話だ。……下戸のお前が、柳橋へ行こうの、屋根舟にしようのと、水をむけるからしてあんまり智慧がなさすぎる。……ふふふ、まア、そうしょげるな。これでも、おれは気がいいからの、むげに、お前の顔をつぶすようなまねはしない。とりもちにめんじて、ある智慧なら貸してやる」
ひょろ松、ピョコリと頭をさげ、
「さすがは、阿古十郎さん」
顎十郎は、船舷へだらしなく頬杖をついて、
「おだてるな。……それで、今度はどんなことだ」
へえ、といって、急に顔をひきしめ、
「それがどうも、すこし、桁外れな話なんで。……あなたは、ひちくどいことはお嫌いだから、手っとりばやくもうしますが……じつは、このごろ御府内で、妙なことがはじまっているんでございます」
顎十郎、のんびりとした声で、
「ふむ、妙とは、どう妙」
「それが、どうも、捕えどころのねえ話なんで……。どうしたものか、この月はなっから江戸の市中が水を打ったようにひっそりと静まりかえっているんでございます。……どんなことがあったって、日に十や二十はかかしたことのねえ小犯行が、これでもう十日ほどのあいだ、ただのひとつもございません。