Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.832 Zeichen · 24 Bildschirme
がない。
念のため、一人ずつ糺明して見たが、双互の口合いからおして、一人として錠口までも来たものがないことがわかった。娘の花世に訊ねて見たが、花世も知らないと答えた。
与力の邸へ盗人が忍び入ろうはずもないが、庭へ降りて裏口の木戸を改めて見ると、桟は内側からちゃんとかかっている。
庭のそとはすぐ春木町の通りになっているが、高い板塀には黒鉄の厳重な忍返しがついているし、昼間は相当人通りのはげしい通りだから、怪しまれずに板塀を乗り越えることなどは出来ない。となると、やはり持って出て、どこかへ落したのだと思うほかはない。
十日ほど前、芝田村町の路上でちょっとした喧嘩沙汰があった。
斬られたほうは四谷箪笥町に住む旗本の三男の石田直衛。双方とも酒気を帯びていて、行きずりの口論から抜きあわせたのだが、相手は直衛の小手に薄傷を負わせておいて逃げてしまった。
星明りで面体はさだかに判らないが、二十五六の身装のいい男だったという申立てである。印籠はその場所に落ちていたのを、定廻りが拾って番屋へ持ってきた。覆蓋をあけて見ると、赤い薬包が二服入っている。調べて見ると、意外にも、それは猛毒を有する鳳凰角(毒芹の根)の粉末であった。