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Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.832 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

その、かけがえのない大切な証拠物件を、庄兵衛がひょろりと紛失してしまった。

どこかへ失くしまして、では事がすまぬ。吟味方一統の失態ともなり、三百人からの人間の上に立つ組頭の体面にもかかわる。こんなことが評判になったら、また南番所の組下が手を叩いて笑いはやすであろう。そんなことはいいとして、もし、ひょっとして、賄賂をとって証拠湮滅をはかったのだろうなどと、痛くもない腹をさぐられるようなことにでもなったら、それこそ、のめのめと生きながらえているわけにはゆかぬ、まさに皺腹ものである。

さすが強情我慢の庄兵衛も、これにはすっかり閉口してしまった。

早速、腹心のひょろ松をひそかに呼びよせ、手下の下ッ引を動員して、市中の質屋、古物贓品買を虱つぶしにあたらせているが、今朝になっても一向に音沙汰がない。

例の強情から、印籠がまだ出ないことは娘や阿古十郎にも秘し隠し、さり気ない体を装っているが、胸の中はまるで津波と颶風が一緒にやって来たような波立ちかた。いても立ってもいられぬような心持である。

番所の表向は、調べ物という体にして、以来、居間から一歩も出ずに閉じ籠っているが、なにをするにも手がつかぬ。