Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かお

顔

宮本 百合子

Lesen Sie 顔 (かお) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.099 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

娘は、止めどがなくなったように、また云った。

「ガスタブばかりじゃあないわ、みんなそう云ったことよ。お前みたいに――うう、時計屋の子の癖にそんな――イエス様みたいな顔をしているなんて、てっきり悪魔に違いないって。だから私」

娘は睨むようにフランツの顔を見た。フランツはおどろいて娘を見た。

「触ってなんか貰いたくないの」

二三歩、小娘は、こわさを我慢してしゃんしゃん歩いた。が、フランツが一寸手を動すと一時に「わーッ」と声をあげ、三人一度に転るように彼の傍から馳け去ってしまった。

フランツは、ぼつり独りで、頭を垂れ、列を脱れて日暮の路を帰った。

その晩、フランツは生れて始めて、しげしげと鏡で自分の顔を見た。娘の云ったのは嘘でなかった。

床に入ったが、寝つくどころではなかった。彼には自分というものが、まるで解らなくなってしまった。

屋根部屋の窓から光が差して、寝台の裾から床に蒼白い月光の湖を作っていた。時々、黒い木の小枝や葉の影がちらちらする。フランツは、寝鎮った夜の裡で、沁々考えると、何ともいえない陰鬱な恐怖に襲われた。自分の前途には何が待っているのだろう。