Japanische Klassiker mit Furigana
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かぜのたより
風の便り
Lesen Sie 風の便り (かぜのたより) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.044 Zeichen · 66 Bildschirme
これは、ひどく太って気の毒な或る女流作家の言葉なのです。けれども、此の一行の言葉には、迫真性があります。さて、私も、のがれて都を出ました。懐中には五十円。
私は、どうしてこうなんでしょう。不安と苦痛の窮極まで追いつめられると、ふいと、ふざけた言葉が出るのです。臨終の人の枕もと等で、突然、卑猥な事を言って笑いころげたい衝動を感ずるのです。まじめなのです。気持は堪えられないくらいに厳粛にこわばっていながら、ふいと、冗談を言い出すのです。のがれて都を出ましたというのも、私の苦しまぎれのお道化でした。態度が甚だふざけています。だいいち、あの女流作家に対して失礼です。けれども私は今、出鱈目を言わずには居られません。
あなたから長いお手紙をいただき、ただ、こいつあいかんという気持で鞄に、ペン、インク、原稿用紙、辞典、聖書などを詰め込んで、懐中には五十円、それでも二度ほど紙幣の枚数を調べてみて、ひとり首肯き、あたふたと上野駅に駈け込んで、どもりながら、し、しぶかわと叫んで、切符を買い、汽車に乗り込んでから、なぜだか、にやりと笑いました。やっぱり、どこか、ふざけた書きかたですね。