Japanische Klassiker mit Furigana
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ふうきんとさかなのまち
風琴と魚の町
林 芙美子
Lesen Sie 風琴と魚の町 (ふうきんとさかなのまち) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.372 Zeichen · 27 Bildschirme
淋しくなった。
裏側の水上署でカラカラ鈴の鳴る音が聞える。
私は裏側へ廻って、水色のペンキ塗りの歪んだ窓へよじ登って下を覗いてみた。
電気が煌々とついていた。部屋の隅に母が鼠よりも小さく私の眼に写った。父が、その母の前で、巡査にぴしぴしビンタを殴られていた。
「さあ、唄うてみんか!」
父は、奇妙な声で、風琴を鳴らしながら、
「二瓶つければ雪の肌」と、唄をうたった。
「もっと大きな声で唄わんかッ!」
「ハッハッ……うどん粉つけて、雪の肌いなりゃア、安かものじゃ」
悲しさがこみあげて来た。父は闇雲に、巡査に、ビンタをぶたれていた。
「馬鹿たれ! 馬鹿たれ!」
私は猿のように声をあげると、海岸の方へ走って行った。
「まさこヨイ!」と呼ぶ、母の声を聞いたが、私の耳底には、いつまでも何か遠く、歯車のようなものがギリギリ鳴っていた。
(昭和六年四月)