Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ふうちそう

風知草

宮本 百合子

Lesen Sie 風知草 (ふうちそう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.107 Zeichen · 88 Bildschirme

Aozora Bunko

こむ乗物の中で、粗暴な群集にも乗ものそのものにもまだ馴れない重吉が、大きな体をおとなしく小づかれたり、押しつけられたりするのを見るのは辛かった。重吉は、自分が痛感する荒っぽさをひろ子の身にそえて、乗物がこむと、しきりにひろ子をかばった。今もそれで、二人のあがきが却ってわるかった。

「ね、わたしはいいのよ、ここでうまく立っているのよ」

池袋で、長い列につながって省線の切符を買い、乗りかえた。思いがけず、一つ空席があった。ひろ子は、無理に重吉をかけさせた。

「今は、あなたの方がくたびれやすいのよ」

揉まれた重吉の顔に疲労があらわれている。

「腹がすいて来たね」

重吉は、ひろ子を見上げて苦笑した。

「もう?――でも、おそいこともおそいわね」

「こんどは、夜の弁当ももって来ようよ」

「そうね」

暫くだまっていたが、やがて重吉が、

「ひろ子」

と呼んだ。

「なあに?」

つり革へ手の先だけをのこして、ひろ子は重吉に顔を近づけた。

「『一塊の土』という小説があったろう?」

「あるわ」

芥川龍之介の作品としては、自然主義風なものとして人々に記憶されている作品であった。

「覚えているかい」