Japanische Klassiker mit Furigana
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かぜたちぬ
風立ちぬ
堀 辰雄
Lesen Sie 風立ちぬ (かぜたちぬ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.998 Zeichen · 108 Bildschirme
私達は部屋の中へ戻った。私が再び明りの側に腰を下ろして、其処にほうり出してあるノオトをもう一度手に取り上げて見ていると、彼女はそんな私の背後に立ったまま、私の肩にそっと手をかけながら、それを肩越しに覗き込むようにしていた。私はいきなりふり向いて、
「お前はもう寝た方がいいぜ」と乾いた声で言った。
「ええ」彼女は素直に返事をして、私の肩から手を少しためらいながら放すと、ベッドに戻って行った。
「なんだか寝られそうもないわ」二三分すると彼女がベッドの中で独り言のように言った。
「じゃ、明りを消してやろうか?……おれはもういいのだ」そう言いながら、私は明りを消して立ち上ると、彼女の枕もとに近づいた。そうしてベッドの縁に腰をかけながら、彼女の手を取った。私達はしばらくそうしたまま、暗の中に黙り合っていた。
さっきより風がだいぶ強くなったと見える。それはあちこちの森から絶えず音を引きいでいた。そしてときどきそれをサナトリウムの建物にぶっつけ、どこかの窓をばたばた鳴らしながら、一番最後に私達の部屋の窓を少しきしらせた。それに怯えでもしているかのように、彼女はいつまでも私の手をはなさないでいた。