Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひこうきにのるあやしいしんし

飛行機に乗る怪しい紳士

田中 貢太郎

Lesen Sie 飛行機に乗る怪しい紳士 (ひこうきにのるあやしいしんし) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.409 Zeichen · 3 Bildschirme

Aozora Bunko

(お客さんは一人か)

その時A操縦士がちらと後をふりかえった。風はますます烈しくなって、そのうえ雨さえ加わって来たので機体は無茶苦茶に揺れた。T機関士は鉛筆を執ってメモに何か書いていたが、やがてそれを前にいるA操縦士に渡した。それには、

「客は一人か」

と書いてあった。するとA操縦士は前方を向いたまま軽く頭を揮った。T機関士はまたメモに鉛筆を走らした。

「では、二人か」

A操縦士の頭がまた左右に動いた。

(客席には一人しか見えないが、おかしいなあ)

T機関士は不思議に思って後を見た。客は依然として身うごきもしないで窓外を眺めている。

(やっぱり一人だ)

T機関士がそう思った時、A操縦士の右手が動いて、前の防風ガラスに指が往った。

「なし」

A操縦士は明らかに客はなしと書いたのであった。同時にT機関士は背すじに水をかけられたように思った。T機関士はあわてて鉛筆をとると、何かに追われるようにしてメモの上に走らした。

「そんなことはない、左側二番目の椅子に、たしかに一人いる」

その紙片を受けとってちらと眼をやったA操縦士は、これもはじかれたようにして後を見た。

「あ」