Japanische Klassiker mit Furigana
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しょくま
食魔
岡本 かの子
Lesen Sie 食魔 (しょくま) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.911 Zeichen · 74 Bildschirme
「なんだって、自分はあんなに好きなお絹と一しょになり、好きな生活のできる富裕な邸宅に住めないのだろう。人間に好くという慾を植えつけて置きながら、その慾の欲しがるものを真っ直には与えない。誰だか知らないが、世界を慥えた奴はいやな奴だ」
その憤懣を抱いて敷居を跨ぐのだったから、家へ上って行くときの声は抉るような意地悪さを帯びていた。
「おい。ビール、取っといたか。忘れやしまいな」
こどもに向き合い、五燭の電灯の下で、こどもに一箸、自分が二箸というふうにして夕飯をしたためていた妻の逸子は、自分の口の中のものを見悟られまいとするように周章て嚥み下した。口を袖で押えて駆け出して来た。
「お帰りなさいまし。篤がお腹が減ったってあんまり泣くものですから、ご飯を食べさせていましたので、つい気がつきませんでして、済みません」
いいつつ奥歯と頬の間に挟った嚥み残しのものを、口の奥で仕末している。
「ビールを取っといたかと訊くんだ」
「はいはい」
逸子は、握り箸の篤を、そのまま斜に背中へ抛り上げて負うと、霰の溝板を下駄で踏み鳴らして東仲通りの酒屋までビールを誂えに行った。
もう一突きで、カッとなるか涙をぽろっと滴すかの悲惨な界の気持にまで追い込められた硬直の表情で、鼈四郎はチャブ台の前に胡坐をかいた。