Japanische Klassiker mit Furigana
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しょくま
食魔
岡本 かの子
Lesen Sie 食魔 (しょくま) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.911 Zeichen · 74 Bildschirme
彼等は鑑識の高さや広さを誇った。この点ではお互いに許し合った。琴棋書画、それから女、芝居、陶器、食もの、思想に亙るものまでも、分け距てなく味い批評できる彼等をお互いに褒め合った。「僕らは、天才じゃね」「天才じゃねえ」
檜垣の主人は、胸の病持ちであった。彼が独身生活を続けるのも、そこから来るのであったが、情慾は強いかして彼の描く茫漠とした油絵にも、雑多に蒐められる蒐集品にも何かエロチックの匂いがあった。痩せて青黒い隈の多い長身の肉体は内部から慾求するものを充し得ない悩みにいつも喘いでいた。それに較べると中背ではあるが異常に強壮な身体を持っている鼈四郎はあらゆる官能慾を貪るに堪えた。ある種の嗜慾以外は、貪り能う飽和点を味い締められるが故に却って恬淡になれた。
檜垣の主人は、鼈四郎を連れて、鴨川の夕涼みのゆかから、宮川町辺の赤黒い行灯のかげに至るまで、上品や下品の遊びに連れて歩るいた。そこでも、味い剰すがゆえにいつも暗鬱な未練を残している人間と、飽和に達するがゆえに明色の恬淡に冴る人間とは極端な対象を做した。鼈四郎は檜垣の主人の暗鬱な未練に対し、本能の浅間しさと共に本能の深さを感じ、檜垣の主人は鼈四郎の肉体に対して嫉妬と驚異を感じた。