Japanische Klassiker mit Furigana
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しょくま
食魔
岡本 かの子
Lesen Sie 食魔 (しょくま) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.911 Zeichen · 74 Bildschirme
病友は鼈四郎にうしろ頸に脹れ上って今は毬が覗いているほどになっている癌の瘤へ、油絵の具で人の顔を描けというのである。「誰か友だちを呼んで見せて、人面疽が出来たと巫山戯てやろう」鼈四郎が辞んでも彼は訊入れなかった。鼈四郎は渋々筆を執った。繃帯を除くとレントゲンの光線焦けと塗り薬とで鰐皮色になっている堆いものの中には執拗な反人間の意志の固りが秘められているように思われる。内側からしんの繁凝が円味を支え保ち、そしてその上に程よい張度の肉と皮膚が覆っている腫物は、鋭いメスをぐさと刺し立てたい衝動と、その意地張った凝り固りには、ひょぐって揶揄してやるより外に術はないという感じを与えられる。腫物の皮膚に油絵の具のつきはよかった。彼は絵の具を介して筆尖でこの怪物の面を押し擦るタッチのうちに病友がいかにこの腫物を憎んだか。そして憎み剰った末が、悪戯ごころに気持をはぐらかさねばならないわけが判るような気がした。「思い切り、人間の、苦痛というものをばかにした顔に描いてやれ、腫物とは見えない人の顔に」彼は、人の顔らしく地塗りをし、隈取りをし鼻、口、眼と描き入れかけた。