Japanische Klassiker mit Furigana
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きがちたいをあるく
飢餓地帯を歩く
下村 千秋
Lesen Sie 飢餓地帯を歩く (きがちたいをあるく) von 下村 千秋 (しもむらちあき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.478 Zeichen · 31 Bildschirme
そして、わしは今、娘を喰って生きようとしている」
私は、思わず老婆の顔を見詰めた。この老婆は、娘を売って来た小金を持っているらしく、それを頻りと気にした。そして、傍にいる私をまで、時々警戒するような素振を見せるには、私も少しばかり参った。
さて、その翌日の夜、私は、この老婆の娘を訪ねるために青森市の私娼窟へ入って行ったのであった。粉雪が降っては止み、降っては止んでいた。そして、往来には、雪と氷とがカンカンに凍っていて、私は幾度か、辷り倒れそうになった。そこは、海岸に近い所で、陸奥湾から吹きつけて来る寒風が、寒い往来の夜の空気を、引き裂くように吹き抜けていた。私は、この三日前、浅虫温泉の近くの凶作地、小湊村を歩いている時も、雪と風とに、からだ中が凍りつくような目に会ったが、しかし、それもこれほどではなかった。私娼窟――暗黒街へ、その女を訪ねて行くという気持ちも大分私の心を寒くしたせいもあったではあろうが。
私娼窟は、窟の名にふさわしくはない、広いガランとした往来の両側に、うす暗く並んでいた。大ていは一戸一戸に別れた二階建で、私娼の家としては大き過ぎたが、それだけに、うらぶれた感じが漂っていた。