Japanische Klassiker mit Furigana
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くびをうしなったとんぼ
首を失った蜻蛉
佐左木 俊郎
Lesen Sie 首を失った蜻蛉 (くびをうしなったとんぼ) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.704 Zeichen · 10 Bildschirme
まあ、やって御覧なさいよ。」と、仲田はすすめた。
「随分いい話ですけれど、まあ、明晩まで考えさせて下さい。ちょっと気が引けますから……。」と、言って彼は仲田と別れて、その帰りに、自然美で有名な井之頭の公園に廻って見たのであった。
彼は池のほとりを静かに歩きながら、屠殺場の場面を種々に頭の中に描いて見た。厭がってヒンヒンと鳴いては後去りする豚を無理矢理に枠の中に引っ張り込んで繋ぐ……、尚も悲鳴を上げて泣き続けているのに、大きな薪割様の刃物で、ガンと額に一撃を喰わせる……、するとその額から鮮血が、弾かれたように迸り出て、四辺のものが紅に染められる。また血はそこに働く人々の白いシャツにも飛沫きかかる……、豚はそこにころりっと倒れて屍となる。それを両腕鮮血にまみれながら、鋸でごそごそひき切る。――彼はこうした場面を想像で頭の中に描いて見ると、どんなに金になっても、豚を屠ることは厭だった。血まみれになって働く穢さよりも、あの無邪気な生き物を殺すのが厭だった。生活のためにはどんな事でもする覚悟でいたのだが、自分が食うために豚を屠るのは……その藻掻き苦しむ酷な有様を自分の手によって醸し、それをまのあたり凝視るのは……。