Japanische Klassiker mit Furigana
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えきふにっき
駅夫日記
白柳 秀湖
Lesen Sie 駅夫日記 (えきふにっき) von 白柳 秀湖 (しらやなぎしゅうこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.989 Zeichen · 69 Bildschirme
見給え、学問をしてわざわざ工夫になった人さえあるではないか、君! 大いに自重しなくちゃいけないよ、若い者には元気が第一だ」
「はい……」と小さい声で応えたが、私は何とも知れぬ悲しさと嬉しさとが胸一ぱいになって、熱い涙がハラハラ頬を流れる。努めて一口応答をしようと思うけれど、張りさけるような心臓の激動と、とめどなく流れる涙とに私はただ啜り上げるばかりであった。
「小林はあれで立派な学者だ、この間の話では複線工事の監督にここへ来るということだから、君も気をつけて近附きになっておいたら何かと都合がよかろう」
私の胸には暁の光を見るように、新しい勇気と、新しい希望とが湧いた。
十六
社宅を辞して戸外に出ると夜は更けて月の光は真昼のようである。私は長峰の下宿に帰らず、そのまま夢のような大地を踏んで石壇道の雨に洗われて険しい行人坂を下りた。
故郷の母のこと、下谷の伯母のこと、それから三崎町の「苦学社」で嘗めた苦痛と恐怖とを想い浮べて連想は果てしもなく、功名の夢の破滅に驚きながらいつしか私は高谷千代子に対する愚かなる恋を思うた。私がこれまで私の恋を思うたびに、冷たい私の知恵は私の耳に囁やいて、恋ではない、恋ではないとわれとわが心を欺いてわずかに良心の呵責を免れていたが、今宵この月の光を浴びて来し方の詐欺に思い至る