Japanische Klassiker mit Furigana
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えきふにっき
駅夫日記
白柳 秀湖
Lesen Sie 駅夫日記 (えきふにっき) von 白柳 秀湖 (しらやなぎしゅうこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.989 Zeichen · 69 Bildschirme
その疎らな木立越しに麦の畑が遠く続いて、菜の花の上に黒ずんだ杉の林のあらわれたところなど、景色も道も単調ではないけれど、静かな武蔵野の春にわれ知らず三里の道を行き尽して、多摩川の谷の一目に見渡される、稲荷坂に出た。
稲荷坂というのは、旧布哇公使の別荘の横手にあって、坂の中ほどに小さい稲荷の祠がある。社頭から坂の両側に続いて桜が今を盛りと咲き乱れている。たまさかの休暇を私は春の錦という都に背いて思わぬところで花を見た。祠の縁に腰をかけて、私はここで「通俗巴里一揆物語」の読みかけを出して見たが、何となく気が散って一頁も読むことが出来なかった。私は静かに坂を下りて、岸に沿うた蛇籠の上に腰かけて静かに佳人の運命を想い、水の流れをながめた。
この一個月ばかり千代子はなぜあんなに欝いでいるだろう、汽車を待つ間の椅子にも項垂れて深き想いに沈んでいる。千代子の苦悩は年ごろの処女が嫁入り前に悲しむという、その深き憂愁であろうか。
群を離れた河千鳥が汀に近く降り立った。その鳴き渡る声が、春深い霞に迷うて真昼の寂しさが身に沁みるようである。
二十四
四月一日私はいよいよ小林浩平に伴われて門司へ立つのだ。