Japanische Klassiker mit Furigana
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まぞう
魔像
林 不忘
Lesen Sie 魔像 (まぞう) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 131.494 Zeichen · 260 Bildschirme
言っているうちにも、サッと濡れた風が吹き込んで来て、お部屋の戸障子がガタガタと鳴る。木の枝の騒ぐ音が何やら物すごく聞えてくる。見るみる世の中が真っ暗になって行くような心もちで、その闇い中で、脇坂山城守の机の上にひらいてある書物が、風に煽られてヒラヒラ白く動いて見える。
山城守は、すわったまま身を屈ませて、軒の端ごしに空を仰いだ。
「これは、暴風雨になりそうだぞ。恐ろしいあらしに――」
言葉の終らないうちに、ゴウッ!――家棟が震動して、パラリ、屋根のどこかに音がしたかと思うと、冬の雨は脚が早い。早やつづけさまに軒を叩いて――本降りだ。
「こりゃいかぬ!」
山城守は、起ち上った。あけ放してある縁から雨滴が躍りこんで来て、畳を濡らし、長駆して山城守の膝を襲いそうにするので、かれはあわて出したのだ。立って行って、自分で障子をしめようとした。そして、その廊下に、まだ村井長庵がまごまごしているのを見て、
「長庵、今は帰れぬ。一まず、こっちへはいれ。はいって、雨止みを待つがよい」
「へいへい」
長庵と、長庵を送りに立った小姓とが、山城守の言葉に甘えてお部屋へ逃げ込もうとしていると、雨は一そう激しくなって、地面を打ち、樹々を叩いて、障子にも、ポツリ、ポツリ、大粒な水のあとが滲み出している。