Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
さかなのじょぶん
魚の序文
林 芙美子
Lesen Sie 魚の序文 (さかなのじょぶん) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.384 Zeichen · 21 Bildschirme
急に、まるで河童の子のように眼のところまで両手を上げて、しくしく声をたてて泣き始めたのだ。
この泣き方は実に面白い。まるで、閨を共にする男へなんぞの色気は、大嵐の中へ吹き飛ばしたかのように、自分一人で涙を楽しんでいる風なのだ。子供のように、泣きながら泥の上を引きずられて来た汚れた手で、足の裏を時々ガリガリやりながら思い出したようにシャックリをする。そのシャックリの語尾はまるで羊が鳴いているようにメーと聞えた。
「何だ! 子供みたいに、もうこれから、こんな余計な算段は止めた方がいいよ、判ったかね」
僕は窓にぶらさがっている濡れタオルを彼女に取ってやって、一人窓の外の花の咲いた桐の梢を見上げた。
実に青々とした空であった。僕は、何でもいいからつくづく働きたいと思った。働いてこの蟹の穴のような小さな家庭を培って行きたいと思った。僕は急に、久し振りに履歴書をまた書きたくなって、硯に白湯を入れ、桐の窓辺に机を寄せて、いっときタンザしてみた。うつむいていると、美濃紙が薄く白いので、窓の外の雲の姿や桐の梢の紫の花の色まで沁みて写りそうであった。
もはや、行きつくところまで行った風景でもある。