Japanische Klassiker mit Furigana
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りぎょ
鯉魚
岡本 かの子
Lesen Sie 鯉魚 (りぎょ) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.795 Zeichen · 12 Bildschirme
寺へ引き取られたこどもの時分から、魚に餌をやりつけているので、魚の主なものは見覚えてしまい、友だちか兄弟のように馴染んでしまっていました。
五月のある日、しぶしぶ雨が降る昼でした。淵の魚はさぞ待っているだろうと、昭青年は網代笠を傘の代りにして淵へ生飯を持って行きました。川はすっかり霧で隠れて、やや晴れた方の空に亀山、小倉山の松の梢だけが墨絵になってにじみ出ていました。昭青年がいま水際に降りる岩石の階段に片足を下ろしかけたとき、その石の蔭になっている岸と水際との間の渚に、薄紅の色の一かたまりが横たわっているのが眼に入りました。瞳を凝らしてよく見ると、それが女の冠るかつぎであることが判り、それを冠ったまま、娘が一人倒れているのが判りました。昭青年は急いで川砂利の上へ飛び下り、娘の傍へ駈け寄って、抱き起しながら
「どうしたのですか」
と訊くと、娘は力無い声で、昨日から食事をしないので饑えに疲れ、水でも一口飲もうと、やっと渚まで来たが、いつの間にか気が遠くなってしまったというのでした。
「それじゃ、幸い、ここに鯉にやる生飯があります。これでもおあがりなさい」