Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
「さようでございます、ずいぶん久しくお米様のお顔も見ませんでしたが、大そうご成人なさいましたこと」
「お前も、家にいた頃と違って、すッかり堅気のお内儀らしくなりましたね」
「いいえ、気苦労ばかりしているので、装にも振にも構えなくなりました」
「そして今でも、家を出た時の人と、一緒に暮らしておいでなの?」
「はい、添い遂げているという名ばかりで……」
「それが一番倖せじゃないか。私なんか、他人には羨まれるような身の上でも……」とツイ自身へ反れるのを口ごもって「結構だよ、そういう苦労はね。で、ご亭主さんは、何を稼業にしているのかい?」
お吉は、言いにくそうにうつむいて、
「いやな渡世で、十手持ちなのでございますが、かんじんな東のお奉行所の御用はおッぽり放しで、この二月程前に、プイと家を出ましたっきり、生きたものやら死んだものやら、何の便りもございません。それでこうして、四貫島の観音様へ、毎日お詣りしているのですが、お米様、ほんとに、人の女房となってみると、いうにいえない苦労があるものでございますよ」
「二月も戻らないでは、さぞ心配なことだろうね」
「もうもう、どんなに思うた男でも、目明しの女房になど、決してなるものではございませぬ」