Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
家の中でそういう声の裡に笑いが含んでいた。万吉はいまいましさに唇を噛みしめたが、所詮ムダだと知ったので、もういたずらに逆らわなかった。
「なにも、こんなにいじめることはないのだけど、逃げようとするからこっちも捕まえる気になるというもの……。実は少しお前さんに、訊きたいことがあるのだけれど、この屋敷では都合が悪いから、改めて私の宅まで来てくれないかえ」
万吉はオヤッと思った。
こう落ちついて聞くと、女の語調にどこか聞き覚えがあるばかりでなく、いう注文がいよいよ出ていよいよ不思議に聞かれたのである。
「じゃ、お前は、この屋敷の者じゃねえんだね」
「誰がこんな、草茫々とした化け物屋敷に住んでいるものかね。万吉さん」
「えっ……?」
「ぜひ、頼みますから私の宅へ来て下さいな。そっちは捕縄を持つ渡世、私は裏の闇に棲む人間だけれど、思案に余っていることがあるんだから、渡世を捨てて会ってくれる訳には行きませんか。そういうこの私の家は本郷妻恋一丁目――」
「あっ、お綱※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
「――分ったでしょう」
不意に手を離されたのと、意外なおどろきにうたれたのとで、万吉はヨロリと後ろへ足を踏み乱しながら、窓の細目へ瞠目した。