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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme

Aozora Bunko

「や? 龕燈返し――」

泳ぐように壁ぎわへきて、その大鏡面をグンと押してみた。

すると、鏡は自然に壁を離れて、くるりと廻る仕掛になっている。

孫兵衛も、うッかりすると、その中へはねこまれそうになったが、はっと驚いて身を退いた。

がんどう返しと呼ぶ非常口は、武家屋敷の主人の居間近くには、必ずどこかに伏せられてあると聞いたが、当時、珍しい南蛮渡りの大鏡を壁にはめこんで、そこから一体どこへつづいているのだろう。

「うぬ、ここまで追いつめて、逃がして堪るものか」

彼は、も一度それへ手をかけた。すると、

「あぶのうござるぞ」

不意に後ろで声がした。

同時に、なれなれしく肩に手をかけて、

「はははは。うッかりその鏡の裏を覗き召さるな。鏡の裏は奈落の闇、ドーンとはねこまれたが最後でござるぞ」

嘲笑をふくんでいう者がある。あっ、誰かと驚いて、孫兵衛、ヒョイとふりかえってみると、例の総髪の若侍、旅川周馬という男だ。

周馬は、とにかく屋敷の主である。どこから出てこようと不審ではないが、お十夜はさすがにちょっと戸まどいをして、咄嗟の言葉が見つからない。

「孫兵衛殿」

かれはすでにお十夜の名まで知っていた。