Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
一人の弦之丞を恋う、お綱とお千絵との境目が――。
メリッ――と、お綱の匕首が、一念に欅の板をえぐり抜いて、柄元まで向うへ通った。
密見の間にいる、お千絵とおたみとは、その音にハッと驚かされて、等しい目色を、思わず後ろの方へ射向けた。
「おッ!」
おたみは、のけぞるばかりに気を消した。無論、お千絵の眉のあたりにも、不安と、怪訝におびやかされた表情が漲った。
そこから見ると、ちょうど、部屋の一面から、謎のごとき刃ものの切ッ尖が、不意に突きぬけて見えたのである。
刃がかりを得た切れ刀はみているまにも、必死に躍って、たちまち切れ目をひろげてきた。
「た、たれじゃッ」
おたみの声が鋭く咎めた。
お綱のほうには、それが耳に入らなかった。半刻あまりの死力が、そこに酬いられてきたうれしさにみちていた。
躍る匕首は、木屑を雪のごとくちらして、たちまち、一尺ばかりもうがってきた。
「誰じゃッ、たれじゃ!」
「オオ……」お綱は初めて手を休めた。そして、こっちから中の様子を明らかに見なおすことができたように、お千絵のほうからも、凄艶なお綱の顔を見たであろう。
「もし」
「たれじゃ、そなたは」