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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme

Aozora Bunko

と、紅蓮の底から叫ばれて、かれは面食らった、歯ぎしりを咬んだ、地団駄をふんだ。

「ええッ、情けねえッ、縄がねえ、縄が、縄が、縄が! ……」

ヒ――ッという、悲鳴が一声揚ったようだ。いよいよお綱も断末魔か?

お千絵様の黒髪にも、無残な火が燃えついてしまったのであろうか?

万吉はもう堪らなくなった。

知らぬことならぜひもないが、みすみすここに自分がいて、お綱を見殺しにするのみか、お千絵様を焼き殺してしまっては、法月弦之丞に対して、なんと、男の面が立とう。

いや、男一匹の面が立つの立たぬのという、そんなケチな問題ではない。

ここで、お千絵様の身に、万一があったひには、銀五郎の死も犬死となり、弦之丞が初志をひるがえして起った意味も、まったく空しいものとなる。

ひいては、世阿弥の消息をつきとめ、阿波の密境を探ろうとする中心力を失ってしまい、すべてはもとの晦冥に帰って、遂に、俵一八郎や常木鴻山なども、あのまま、永世に浮かばぬ人となって亡びるであろう。

無論、目明し万吉としても、そうなっては、今日まで可愛い女房にさえ居所を知らせずに、江戸くんだりまでやッてきて、屑屋をしたり、犬の真似をしたりして、悲雨惨風をなめている苦労がみんな水の泡だ。