Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
「無論、屋敷は焼け落ちてしまったさ」と、捨鉢のように言い放った。
「――残念だな。すると……お綱はどうなってしまったろう。オイ」と急に思いついたように孫兵衛。
「あの、鏡の裏から、どこかへ逃げ道があったのか」とききはじめた。
「逃げ道なぞがあるものか。ないからこそ安心して、お綱を置いてきたのではないか」
「えッ、じゃ今頃は」
「灰になってしまったろう。あアあ……そっちは女だけのことだが、この周馬の身になってみろ、多年心を砕いて、手に入れようと計っていた財宝と恋人、二ツとも一緒に失くしてしまった……」
泣かんばかりの落胆である。
と、お十夜が、不意にまた、
「オイ、周馬――」と呼びかけてきた。
「なんだ。おれはもう、返辞をするのもいやになった」
「そうしょげるのはまだ早い。さッきの使屋の話では、火元は、墨屋敷から出た怪し火だといった」
「ウム、怪し火だといった」
「その怪し火に、何か曰くがありそうじゃねえか。とにかく、ここでベソを掻いていたところで始まらねえわけだ、もう一息駈けだして、現場の様子を見た上の思案としよう」
「なるほど、それももっともだ」
くじけた元気をとりなおして、お十夜孫兵衛と旅川周馬、ふたたび、韋駄天の足を飛ばした。