Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
弦之丞が虚無僧寺にかくれ、そのまま旅へ去ったのは、こうした切ない理由からであった。
「とにかく急いでみるに如くはない。御府内へ入れば、なお詳しい様子も分り、いずれお千絵どのの安否もおよそ知れるであろう」
弦之丞は、茫然と気ぬけのしてゆく、吾とわが心に鞭を打った。
江戸朱引内の境、八ツ山下の木戸を通りこえたのは、やがてその日の七刻過ぎ――。
こうして、法月弦之丞は、いよいよ江戸へ着いたのである。
旅川周馬の脅威。
お十夜が恋の仇と寝刃をとぐ彼、そして、お綱の思いあくがれている彼の姿が、江戸の地へ立ったのである。
すると。
「おお、弦之丞だ」
と一歩、かれが江戸へ入るとすぐに、こういって、その姿を凝視した者がある。
その男は、高輪岸の支度茶屋に腰かけて、午ごろから、しきりに往来を見張っていたのであるが、弦之丞の過ぐるを見ると同時に、
「これ、茶代は置いたぞ」
あわててそこを飛びだした。
とも知るや知らずや、弦之丞は大木戸から裏通りへ入って、三田から芝のほうへ急いだ。
後からそれをつけて行った者は軽捷な旅いでたちで、まず服装のいい武芸者という風采、野袴を短くはき、熊谷笠をかぶり、腰には長めな大小をさし、それは朱色の自来也鞘であるように見られる。