Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
「勘定を払って、そろそろ出ようじゃないか」
「だって、今から行ったところで」
お綱は座敷の障子を細目にあけて、
「ごらんな、陽があたっているじゃないか」
「待つという時刻は永えものだ」
「それよりは万吉さん、これから、私が一つたずねたいことがあるんだから、まあ、もう少し腰を落ちつけておくれなね」
「うむ、そりゃ何でも聞くけれど……」と万吉、飲めない口のくせにまたうっかり一盃ほして、
「おれにゃあおよそ分っている」と独りでうなずいたものである。
「分っている? まあ、八卦屋さんみたいだこと」
「そりゃあ、ヘボにしろ目明しの万吉だ。お前がおれにはッきりと話しておきてえことというのは、いつか墨屋敷の窓の下で、お千絵様さえ見つけてくれたら俺も何なりと相談相手になるといった、あの約束をふんで、弦之丞様へ、お前の恋を取次いでくれというのだろう。どうだお綱……」
「万吉さん……」お綱は酒の上の頬に紅を増して、「……察しておくんなさいよ」
繻子の襟へあごを埋めて、聞こえぬほどな声でいった。
「だが……そのことは、もう少し時機を待っていねえ。な、いつかもお前に話したように、弦之丞様は本来なら法月一学という大番組頭の御子息だ。