Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
黙っているが、ひもじそうに見えたので、観音堂の境内で、串にさした芋田楽を買ってやると、お三輪も乙吉も、歩きながらムシャムシャ食べる。あんな物が、どんなに味覚をよろこばせるのかと思うと、熱い涙がにじみ出て、お綱は、放縦にぜいたくのし放題をやってきたことが、この二人だけにすまない気がする。
観音堂から田町の裏田圃――向うを見ると吉原の一廓が宵の空に薄黒く浮いていた。赤い灯の数の一ツ一ツは花魁たちの部屋なのであろう、田圃をこえて、大尽舞の笛や、すががきの三味線や太鼓が、賑やかに流れてくる。
その廓を取りまいているおはぐろ溝のふちに添って、頭巾のお綱はうつむき加減に、お獅子の二人は後先に、トボトボ歩いてゆくのである。
文字どおりな鉄漿の使い水や、風呂の垢や、台の物の洗い流しや、あらゆる廓の醜悪がこの下水へ流れこんで、どす黒い泡を立てていた。そこへは、籠の鳥の女がしぼる涙もしたたり落ちてくるであろうし、あたりの空気もその下水のように濁っている気がして、なんとなく、息づまるものが澱んでいた。そしてこの溝どろの空気の漂う町が、お綱の育った故郷である。
「じゃあ……」