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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme

Aozora Bunko

田中田ン圃の寒風もいとわず、土手はチラチラと廓通いの人影がたえない。と――向うから、俳諧師か何かを取巻きにつれて、おさまった若旦那がほろ酔いでくる。

お綱の目が輝いた。

あいつ! と目星をつけたら、決して遁したことがないお綱だったが、妙に指先がこわばって、その人間をやりすごしてしまった。

「ちッ……」と舌うちをして、残り惜しそうに振り向いたが、やがてまたもう一人、たのもしい金持ちがお綱の前を歩いて行った。

それは紺股引にわらじをはいた爺さんである。わらじがけであってみれば吉原帰りでないことは知れている。お綱の目をそそったのは、蛇が蛙を呑んだように胴ぶくれのしている内ぶところ。たしかに、まとまった金がある。

今戸、馬道の四ツ角へきた。

人通りが乱れている。今だ! と思いながら、お綱は、フッ――と前へ駈けぬけようとしたが――。

なんだか、妙に、気が重くなっていた。

「魔がさしたね! 見返りお綱! お前のもち前の魔がさしたね!」

それは自分で自分にいう、心の底の声であった。

そう思った刹那に、お綱はなぜか、ブルブルと身がふるえてきた。かくも、自分をはッきりと意識するようでは、とても、隼に人の物を掏るなどという神技に近い芸ができるものではない。