Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
「お風呂の帰り? ずいぶん研きたてたこと」
「そりゃ私にだって、見せたい人が半分ぐらいはありますからね」
「おやご免なさい。お染久松、お品お十夜って、この河岸では評判でしたっけね。そういえばあのお十夜さん、さッぱり影が見えないようだけれど……」
「いつぞや、菖蒲見物に遠出した時、出先で妙な女に会ってから、急に素振りが変ってしまったの。ほんとに、男ほどアテにならない者はありゃしない。お米さんもせいぜい人には気をつけてお惚れなさいませよ」
「大丈夫、私には、一生涯そんな人なんかできッこないのだから……」冗談にしていた話が、妙に淋しい調子に落ちて、お米は顔を横にそむけた、――どこかを彷徨う虚無僧の尺八、聞くともなしに聞くふうで――。
その透きとおるほど白い顔、その細そりした襟脚に気がついて、お品は、あ、うっかり悪いことをいったと心の奥で後悔する。
川長の愛娘で、縹緻のよさも優れながら、お米に一ツの不幸がある。癆咳という病の呪い――いわゆる肺が悪かった。
躑躅の間詰の御子息へ、縹緻のぞみで貰われて、半年たたぬ間に里へ帰され、出戻りの身をぶらぶらしているお米であった。