Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
烏滸ながら、公儀の隠密として、阿波探索の密命を仰せつけられたい――という熱願の文面であった。そしてなお委細のことは伝手を求めて、元の京都所司代、松平左京之介の手もとまで、言訴してある由をつけ加えてある。
弦之丞が、目安箱を利用して、わざとこうした手段をとったのは、代々木荘で鴻山と左京之介との相談でやったことだが、一つには、お千絵の幸福のため、甲賀家の再興のためでもあった。いかに自分が苦心しても、公ならぬ、一個の法月弦之丞としてやった仕事では、無意味である。
目安箱のききめはあった。
それから十数日の後、松平左京之介、突然お召状をうけて本丸へ伺候した。果たして、将軍家は、楓の間の御用箪笥から、弦之丞の嘆願書をとりださせ、阿波の嫌疑や、甲賀家のことや、弦之丞の身がらについて、さまざまな下問があった。
この日、将軍家は左京之介に、何か、大事な密命をさずけたらしい。それかあらぬか、左京之介は、屋敷へ帰るとすぐに、常木鴻山を別室に招いて、密談数刻の後、使いを飛ばして、一月寺にいる弦之丞を呼びにやった。
吉報を待ちわびていた弦之丞、この日だけは歩くのももどかしく思ったか、駕を急がせて、駈けつけてきた。