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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme

Aozora Bunko

お綱はあッ気にとられてしまった。

万吉の口裏では、恋はともあれ、真心だけは、弦之丞も不愍なやつと、認めてくれているらしいので、妻恋の家も畳み、妹弟たちの始末もみて、いつでも、江戸に未練のないように、心支度をしているものを――。

その弦之丞は、出先から姿を隠し、万吉はまた万吉で、突然、帰ってきたかと思うと、上がりもせずに腰掛け話で、

「おれは急に西へ立つから、お前はお前で、別に身の落ちつきを考えなおすがいい」と、いわんばかりな、突ッ拍子もない言葉。

サッと、お綱の顔色が変った。

自分はまだ、弦之丞様にも、誰にも信じられていない! だから振り捨てられるのだ――。厄介な女と、二人が腹を合せて態よく私を振りきッてゆく――。西へ? それは無論、阿波への旅であろう。

こう思うと、お綱は、ワナワナと唇をふるわせた。勝気なだけに、ジッとこらえてはいるが、こみあげてくる悲しさの後から熱い涙が、とめどもなく睫毛に溜った。

「万吉さん――」

いきなりすりよると、万吉の手を痛いほど握り取って、

「な、なぜ、こうならこうと、明らさまにいっておくれでない。私も江戸の女、事情を明しておくれなら、どうでも自分の情を張ろうとは言いはしない……」