Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
その甲賀世阿弥の名が、お綱の母へ――お才どのへ――と宛てた手紙の封の裏に、ありありと読まれた不思議さにうたれて、お綱は、渺茫とした迷宮に疑心をさまよい、万吉も、それへ驚目をみはったまま、ゴクリと、生唾をのんでいるばかり……まったく、いうべき言葉を忘れているとは瞬間、二人の姿であった。
「ウーム……?」と、やがて万吉が思惑に疲れてうなっていた。お綱もそれにつりこまれて、深い息をホッと洩らして、
「……ああ、わからない……」と、指から封を取り落すと、万吉がすぐに拾い取って、中の巻紙をサラサラと夜風に流して読み始めた。
多度津ユキ渡船ヲ待ツ間、コレヲ最後ニ一札便別申シオキ候。在府中、ソモジトノ永キ縁モ、マタ江戸出立ノミギリ、観音堂ニテ綱女ノ顔ヲ見オサメ申シ候夜ノコトモ、今ナオマザマザシク覚エ候エド、コノタビコソハ、阿波ニテステベキ一命、ソモジニハ、スベテヲ忘レクルルコソ、何ヨリモヨキ餞別ニコソ……。
こう読みかけて万吉は、あッ! とお綱の顔をみつめてしまった。
「お、おい! 今読んだのを聞いていたか」
「聞いていました……そ、それから」
「だんだんに読んでいったら、すッかり仔細も分るだろうが、お綱さん! お前はまさしくこの人の娘だ! ア――甲賀世阿弥の血をうけているお嬢様だ」