Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
「なんだか、私の目の前が、急にほんのりと明るくなったような気がする……。そうなれば、弦之丞様へお尽しもできるし、真の父親にも会われるというもの。これも、死んだお母さんのおひきあわせであるかも知れない……」
無明の底から、一道の光をみたように、お綱は手に持ちささえていた新藤五の刀の肌を見まもっていた。そこに、亡き母親の面影がういて、自分に、ものをいいかけるかと――。
すると……。あやしむべし、ジッと眸をこらしている刀の刃紋へ、ありありと、人間の顔らしいものが映った。
が――しかし、それは美しい仲之町の名妓お才の面影ではなかった。鋭い双眸をもった男の悪相! ギラリと、お綱を睨むようにかすって消えた。
「あッ」
と、肩のうしろを振り仰ぐと、いつのまにか、内陣の御灯を横にうけて、一人の男が立っている。長やかな大小と、眉深に結んだ十夜頭巾、それは、まぎれもない孫兵衛の姿だ。
油がきれたか、格子天井の仏龕が、パッ、パッ……と大きな明滅の息をついて、そこへヌッと反身に立っているお十夜の影を、魔魅のようにゆらゆらさせた。
「おお、てめえはッ」
見るがいなや、万吉は床を鳴らして躍り立った。