Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
「おお」と鴻山も、門出へ気味よくうなずいたが、
「お綱どの、一目別れを告げて行ったらどうじゃ」と、向うに据えてある駕の垂れをソッとめくった。と見ると中には、お三輪と乙吉がグッタリと無心な顔をして眠り落ちている。
「何も知らずにおりますから、このまま言葉をかけないでまいります」
「ウム。せっかく罪もなく、寝入っているものを起こして、また辛い涙をしぼらせるのも、心ない業かもしれぬ。では、後々のことは案ぜられるな。殿も御承知の上、代々木荘で養育して取らせい、とおっしゃられたことでもあるから」
「ハイ、もうこれで、塵ほども心残りはございません。ただ慾には、お千絵様に一目会ってまいりたいとは思いましたが……」
「そのお千絵殿も、今の容体では、まだ何を話してもお分りあるまい、いずれ病気が癒えた後に、晴れて名乗りあう時節もござろう」
「じゃアお綱さん――」と促しながら、万吉は笠の紐を結んだついでに、今宵かぎりの江戸の空をふり仰いだ。
つるべ撃ちに鳴った短銃が、観音堂の境内をゆすッてから、一刻ほどたった後だ。
しきりに、あっちこっちを見廻しながら、町人態の男が、バタバタとそのあたりを駈け廻っていたが、お堂の西側にしゃがみ込んで、蝋の裸火に顔を集めている三人の人影を見つけると、