Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
「まだほかに一つの相談。それを諜しあわせたいのが今日の大事な用向きじゃ。これお米……何とそちは近いうちに、この啓之助と共に、阿波へ渡るつもりはないか」
「えっ、阿波へ? ……」
「ウム、阿波はよいぞ阿波の国は――八重の潮に繞らされて渭之津の城の白壁がある。峰や山には常春の鳥も歌おうし、そちの好きな藍の香が霞のようにけむっている……」
ささやきながら啓之助は、お米の肩から胸へ手を廻して、心臓の音をさぐるように、じっと心を現にする。ひと頃は、お米のあこがれでもあった国、これが弦之丞というものを、知らない前のお米であったら、そのささやきに一も二もなく魅惑されているであろう。
「どうじゃ、お米、わしと一緒に阿波へこぬか。この川長へ来はじめてから、それをどれほど思っているか、それは今さらいうまでもない。松のよい所、水のよい所、そちの好きな所へ寮を建ててやろう、どんな栄華もさせてやろう」
「ですけれど森様、阿波のお国は、他領の者を入れぬという、きびしい掟ではございませんか」
「もとよりそれに相違ないが、そちさえウンといえば、どんな手段でもしてみせる」
「手段といって、あの海や関のお固めを、どうして潜って行かれましょう」