Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
「ちぇっ……」舌打ちして戻りかけた侍、ひょいと淀屋橋の上を仰ぐと、のしお形に顔を包んだ美い女が、橋の手欄に頬杖ついて、こっちへニッコリ笑ったものだ。
取って返しの勢いで、十夜頭巾の侍が、ぴたぴたと自分の影へ寄ってくるのに、橋の女は、その欄干に片肱もたせて澄ましたもの。
馴れない頭巾と見えて、うるさそうに、解いて丸めて川の中へフワリと捨てた。――ついでに、下からさッとくる風と、頭巾くずれの鬢の毛を、黄楊の荒歯でざっと梳いて、そのまま横へ差しておく。
「女!」ズンと凄味のある声だ。
いうまでもなく今の侍、逃がしたほうの身代りに、斬らねば虫が納まるまい。
「あい、わたしのことですか?」
小褄を下ろした襟掛の婀娜女はどこまでも少し笑いを含んで、夏なら涼んでいるという形だ。
「知れたこと、なんで邪魔いたした」
「邪魔をしたって? アアそうか、今わたしが石をほうり込んだので、斬り損なった飛ばッちりを持ってきたんですね」
「ウム、どこまでも承知でしたことだな」
「百もご承知、お前さんは、縮緬ぞッきじゃいるけれど、辻斬り稼ぎの荒事師――、そう知ったからこそ横槍を入れたのさ。