Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
これほど真摯な声も、まだ相手の心を衝つにはたらないのか、依然としてその人の横顔は冷たく、諾の一語を洩らさない。
が――あまりに強く衝たれたのは、その人にあらずして、さっきから籬の裾にしゃがんでいたお米の胸。
「弦之丞様には女がある! お千絵様という深い深い恋仲の女子があった! ……」
こう知った心は、火へ水をぶッかけられたよう。くらくらとめまいがして、深い闇へつきのめされた心地に、側の竹へすがってしまった。
支えになった竹の幹は横に撓って、むら笹の葉からバラバラと瑠璃の雨……お米へ無残な露しぐれ。
と、その時一人の男。
そこを離れてひた走りに、闇から闇へかけ去った。根よくお米をつけてきて、この時雨堂を見とどけた森啓之助の仲間であったらしい。
しばらくして……。半刻ほど後お米はふいと気がついた。
見ると目の前に提灯がある、大勢の人がとりまいている。その中には、叔父の半斎もいるし、店の者もきているし、銀五郎と法月弦之丞もまじっていて、何かしきりに低い声でささやきあっていた。
やがてお米は、ソロリと戸板へ寝かされた。
提灯が先に立つ、そして、時雨堂の明り――悲恋の灯はだんだんと遠くなり、暗い追分の宿を通ってゆく。