Japanische Klassiker mit Furigana
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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme
私どもが他へ移った後には、その敷地に河合の土蔵が建ったように聞きました。
花園町の家
私のような年になると、もはや未来はないと同じですから、思出すのはただ過去のことばかりです。
兄が亡くなられて三十余年になりますから、その壮年の頃といえば六十余年前になるでしょう。最初に兄が一家を構えたのは根岸最寄で上野御隠殿下の線路のすぐそばの新築の家でした。上野の坂下の方から曲り曲って這入るのです。あたりは広々としていますし、間取も日当りも好いので、探し当てた次兄はお得意でしたが、すぐ傍を通る汽車をそれほどにも思わなかったのでしょう。
私が始めて尋ねた時には、千住からお母様が職人を連れて来ていられました。間もなく輿入れなさる新嫁さんのお荷物は、持って来てもらわぬようにとはいってはありますけれど、あちらはお家柄だから幾分の心構えはしなければというのでした。
「千住の家も気になるから」と、まだお兄様のお引けにならぬ夕方早くにお帰りです。「では私もそろそろお暇にしましょう」といいますと、次兄は、「何かおいしそうなものをこしらえて置いてお帰り」といわれます。脇田という書生と臨時雇の馴れぬ女との作ったものでは満足出来ないでしょう。