Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

そこでそのお家へ、大切な品はよく梱って幾つか預け、手廻の品だけ持って引移りましたが、どんな些細な物にも名残が惜しまれるのでした。少し落ちついたら運んでくれるという約束でしたから、毎日のように電話をかけたり、見廻りに人を遣っていましたが、やっと都合が附いて、明日はという前日、四月十三日の夜の大空襲で、白山から巣鴨まで、残らず焼野原となってしまいました。長年心懸けて貯えた書物や、貴重品などが皆灰になりましたが、ただ幸だったのは、主人が遺した沢山な蔵書を、この不安な世の中でも、ここで焼いては済まぬからと、全部大学に寄附することにしてありましたのを、やはり車が思うようにならず、幾度かに分けてようよう運び終ったことでした。それも焼ければそれまでとあきらめていましたが、大学は幸に無事でした。

私たちがこの曙町に住むようになったのは、兄が団子坂上に移ってからなのです。兄は洋行から帰った当座は、池の端の花園町におりました。そこで「舞姫」や『国民之友』の夏期附録となった『於母影』などが出来たのです。ちょうど動物園の裏門前の邸で、奥まっていましたから、裏二階から不忍池は見えませんでした。