Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

どこからか古い雛段を出して来て順序よく並べ、暫くするとまた並べ替えるのでした。大釜を古道具屋から買って来て、書生に水を一ぱい張らせます。夕方植木に水をやるのは私の役でした。そんなですから私も自然見真似をして、小さな鉢に松や南天などの芽生を植え、庭に出る事が多いのでした。

或曇り日の午後、ふと出ていらしたお兄様は、杖を手に庭の飛石を横ぎるとて、私の木蔭にいるのを見て、「おい、行かないか」と声をおかけになりました。「はい」と御返事をして、そのまま手の土を払って附いて出ました。古びた裏門を出ると、邸の廻りに一間幅位の溝があって、そこに吊橋が懸っています。それを下して、ずんずん右の方にいらっしゃいます。左はそこらの大地主の広い庭で、やはり溝が廻って、ぽつぽつ家つづきなのです。縦の小路を曲ると宿場の街に出ます。右の方は崩れかかった藁葺の農家が二、三軒あるだけで、あとは遠くまで畠や田圃が続き、処々の畦には下枝をさすられた榛の木が、ひょろひょろと立っています。

なかなか足がお早いので、兵児帯が腰の辺で絶えず動きます。私は長いおかっぱをゆらゆらさせて、離れまいと附いて行きます。